婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「そうゆう姿を見ると自分の自制心に自信が持てなくなる」

「今日は私の誕生日なんだから、頑張ってよ」

それは生殺しだ、と不満気に匠さんは反論する。

「じゃあ、遥も大人の階段を一歩づつ上がるよう頑張ってよ」

うう…と私は唸り、絞り出すような声で「頑張ります…」と一言呟いた。

「んじゃ、今日からスタートね」

匠さんがベッドに腰を下ろすとスプリングがギシリと軋む。

私の手をグイッと引っ張ると、向かい合うよう膝の上に座らせた。

「い、いきなり過ぎない?!」

私は顔を真っ赤にしながら遺憾の意を唱える

「早く俺も『優しいお兄ちゃん』を撤回したいから」

…が、即却下。

私は更に意義を申し立てようとするが、キスによって阻まれた。

匠さんは歯列の間から舌を差し入れて私の小言なんて全て絡め取っていく。

もっと唇の感触を味わいたくて、腕を首にするりと回して匠さんを引きよせた。

久しぶりの甘く痺れるキスに私はうっとりと酔いしれる。

息をつく合間に熱い息が零れた。

「一歩上がって、遥」

耳元で囁くと、匠さんは胸のふくらみに手を這わせてきた。

大きな手のひらに私のささやかな胸はすっぽりと収まってしまう。

ピクリと身体を強張らせたが、先ほどの約束を律儀にも守り、私はされるがままだ。

私の緊張を解すよう匠さんは頬から首筋に唇を這わせていく。

最初は感触を確かめるようなソフトタッチだったけど、徐々に手に力が込めてられていく。

自分の意思とは反し、口からは鼻にかかったような甘ったるい声が出てしまう。




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