婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「迎えに来てもらったとこまでは覚えてるんだけど」私は消え入りそうな小さな声で言う。

「全く」と言って、葛城はグラスに水を注ぎ渡してくれる。

「ありがとう」喉が乾いていたので私は一気に飲み干す。

「酔っ払って潰れたから、うちに連れて来たんだ。あんな状態で家に帰す訳にも行かなかったからね」其処で私はハッとする。

「家に連絡…」

「入れといた。途中で体調が悪くなったから、うちで休ませるって言ってあるよ」

「そっか、何から何まですみません」私はぺこりと頭を下げる。

「それに、葛城さんのご両親に挨拶しなくて大丈夫かしら。その、一応、その婚約者な訳だし」私はおずおずとした態度で尋ねる。

「父親は仕事で出張中、母親は今ヨーロッパに行ってる」さすがセレブだ…。

「そう、じゃご挨拶はまた改めてかな」こんな酒臭い時じゃなくて本当よかった。大事な跡取り息子の嫁として失格だと思われるに違いない。

葛城はグラスにもう一杯水をついでくれた。私はグラスを受けとり二杯目の水も一気に飲み干す。ようやく喉の渇きが収まり気分も落ち着いてきた。

「全く、あんな酒癖が悪いとはおもわなかったぞ?」

「ご、ごめんなさい」私は上目でちろりと葛城を見上げ、顔色を伺うと眉間に思いっきり皺を寄せ不機嫌そうだ。

そういえば、私達って昨日喧嘩したんだっけ。

葛城の態度がツンケンしているのはそのせいだろう。

きっとこんな体たらくじゃ、バイトをまた辞めろって言われるに違いない。

私は小さく溜息をついた。
< 53 / 288 >

この作品をシェア

pagetop