初恋 二度目の恋…最後の恋
 小林さんは資料を一通り目を通すと、私の方を見つめる。その顔には真剣な光が宿っていて、いつもの無邪気で優しい小林さんはそこにはいない。ここにいるのは本社営業一課で働くエリート営業である小林さん。いつもと違う雰囲気に私は息を呑む。でも、その姿にドキッともする。


「坂上ちゃんはどのくらいこの研究に関わっていたの?」


「今回の中間発表は東京北研究所の第一研究室で研究していたものです。チーフは中垣先輩で私がサブでした。静岡に行って誰がサブに入ったのかはわかりませんが、どちらにせよ。中垣先輩が中心となっているのは間違いないです」


 そう、この研究があったから、所長は私の本社転属を渋った。大学からの長きに渡る研究にはもう少しで光が当たるというところまで来ていたにも関わらず、私は本社に転属した。


「この研究を自分の手でしたかったんじゃない?」


 仕事に未練がないとはいえない。だけど、それに勝る人の優しさに触れながら私は今の仕事をしている。その気持ちに嘘はない。それに営業という面から今までの研究したものがどうやって製品になるのかを知ると、感慨も湧く。



「確かに研究という仕事が好きでした。でも、本社に転属したことを後悔はしてないです。毎日楽しいです」



 私がそういうと高見主任も折戸さんもそして、さっきまでは真剣な顔をしていた小林さんも綺麗な笑顔を私にくれる。ここが私の今の居場所。そう思うとやっぱり嬉しくて…仕事を頑張ろうと思うのだった。

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