初恋 二度目の恋…最後の恋
「そうか。研究所とは大違いだな。研究所では就業時間はあってないようなものだからな」


 研究所は個人のIDカードにより全てを管理している。研究の内容によっては徹夜もよくあることだ。終電で帰るくらいなら研究所の仮眠室で寝る方が身体は楽だった。研究が佳境になると中垣先輩だけでなく私も研究所に住んでいるような感じになってしまう。

 自分のマンションには着替えに帰るくらいで、余裕も何もないような生活を送っていたあの頃と比べると生活は全く違うものになってしまっている。それがいいとか悪いとかではなく、全く変わっただけ…。


「ようやく営業一課の生活にも慣れました。でも、最初は慣れずにどうなることかと思いました。」


「そうか」


「中垣先輩は今日、静岡に帰るのですか?」


「いや、今日は東京に一泊するつもりだ。何か食べながら話さないか?」


「はい。私は構いませんが、中垣先輩はいいのですか?」


 カフェでも研究資料から目を離せない先輩が、研究所以外に宿泊するというのは驚く。でも、当の中垣先輩はバッグに資料の束を無造作に入れ、残っているコーヒーを飲み干した。


「何を食べる?」

「何がいいですか?」


「俺は好き嫌いはない。だから、坂上が食べたいものでいい」


 そんなことを言われても困る。営業一課に来て私が知っているのは高見主任に連れて行って貰った店くらい。静かな創作料理を出すその店は大人がゆっくりと話すような店だけど、そこでいいのだろうか?


「創作料理の店で、高見主任に連れて行って貰った店なのですが、そこでいいですか?」


「ああ」

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