初恋 二度目の恋…最後の恋
「営業課は研究所とは全く違いますが、今の生活にもかなり慣れました。今までの研究の時に得た知識が役に立ってます」


 最初はどうなることかと思ったけど、今は毎日それなりに時間を過ごしている。それでも戸惑うことも多い。


「そうか?でも、今日の研究発表を見ながら研究所に戻りたいと言うかと思った。実際に今の坂上の知識もすぐに古くなる。今の研究が終わったら、すぐに新しい研究プロジェクトが始まるのが決まっている。もちろん俺はそこに入る」



 研究所に戻る?新しい研究プロジェクト?
 そんなことは考えなかった。


 でも、中垣先輩の言うように私の持っている知識はいずれ使えなくなる。その時に私はどうするのだろう。その時にならないとわからない。自分のしていた仕事を成功に導く中垣主任に羨む気持ちがもう少し沸くかと思ったけど、そうでもなかった。私は自分が思う以上に営業課に馴染んでいるのかもしれない。研究と同じくらいに今は営業の補助が出来ればいいと思う。



「所長は坂上の席をまだ残している」

「え」


「坂上が家の都合で静岡行きを止めたのを知っているからだろう。お祖母さんの具合はどうだ?」



 私は中垣先輩がお祖母ちゃんのことを知っているとは思わなかった。


「知っていたんですね」


「ああ、坂上が静岡に行かないと聞いたときに所長から聞いていた」


 私が本社に転属すると言ったときに深く聞かなかったのはそのせいだと今頃になってわかる。


 素っ気無いわけではなかった。

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