初恋 二度目の恋…最後の恋
「ありがとうございます。来週にお伺いします」


 そう言って客先を出ると、小林さんは私の顔を見つめニッコリと笑う。小林さんも自分の力でやり切ったのが嬉しいのだろう。高見主任の力を借りればもっと早く決着がついたかもしれない。でも、今回は小林さんの一人の力で勝ち取れた。その意義は小林さんも私も分かっている。


 いつまでも高見主任が小林さんの手伝いをしてくれるわけではない。いつか、自分の力で立たないといけない時が来る。それが今回だったというだけのこと。小林さんの今月の売り上げのグラフは真っ直ぐに天井に向かっていくだろう。その手伝いが少しだけ出来てよかったと思う。最初は私が説明することがあっても、最後の詰めは小林さんの力。私は傍に座っているだけだった。



「営業室に帰る前にアイスでも食べない?」


 そう言ったのは小林さん。ホッとしたのか、いつものように無邪気な微笑みを浮かべる。客先を出ると眩しい光が私たちを包み、湿度の含んだ熱気が襲ってくる。それは額に汗を滲ませ、綺麗な珠を作りスルリと肌を滑る。そんな状態の私が小林さんの甘いお誘いに断れるはずもなく…。結局は頷いていた。


「いいですよ。暑いですもの」



 一緒に連れ立って入ったのは駅前のアイスクリームショップで、学校帰りの学生が溢れている。高校生や大学生の女の子が溢れる中で私と小林さんは明らかに異質なのに小林さんはそんなのには全く気にせずに私に微笑み掛けた。

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