初恋 二度目の恋…最後の恋
「でも…。」


「今の美羽ちゃんを一人にしたくないんだ。葬儀場まで送らせて。葬儀場の前まで送ったらそのまま会社に戻るから」


 どんなに言っても小林さんは引いてくれそうもなかった。でも、私は一人になるほどの強さは持ち合わせてなくて…。結局は小林さんの好意に甘えてしまったのだった。


「ありがとうございます。ご迷惑掛けてすみません」


「迷惑とか思ってないよ。それに美羽ちゃんの役に立てたなら嬉しい。さあ、早く行こう。美羽ちゃんのお祖母ちゃんも早く傍に来て欲しいと思っているよ」


 そこからの記憶は定かではない。


 気付くとタクシーは葬儀場の玄関口に入っていて、私の手は小林さんの手に包まれていて、葬儀場の玄関にはお祖母ちゃんの名前が書かれた看板が掲げられている。その文字が胸に痛みを走らせた。


 玄関に着くと、タクシーのドアが開いた。


「じゃあ、美羽ちゃん。気を付けて」


「はい」


 タクシーの中でもキュッと握られていた手をスルリと引き抜くとタクシーから降り立つ。コンクリートの地面に足を乗せると、身体が揺れた。足に力が入らない。思った以上に私は動揺しているようだった。時間が経てば経つほど、自分の中でお祖母ちゃんが亡くなったことを理解してしまい、身体に力が入らない。



「中まで送る」


 そういいながら、小林さんは私の身体を支えタクシーから降りたのだった。私と小林さんがタクシーから降りると、タクシーは走り去ってしまった。

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