初恋 二度目の恋…最後の恋
「それならよかった」


 私はお祖母ちゃんの眠る布団の横に座ると、私の横にお母さんが座る。そして、静かに私の肩を抱き寄せてくれるのだった。いつの間にか私はお母さんと肩を並べるくらいになっていた。


「お祖母ちゃんのお棺の中に藤色の着物を入れようと思うの。美羽はどう思う?」


「うん。お祖母ちゃんはいつもあの着物だったもの」


 お祖母ちゃんの藤色の着物は私が小学校の時の授業参観の時に着て来てくれた物で、髪を綺麗に整え、背中を伸ばして着物を着ていたお祖母ちゃんはとっても綺麗だった。お母さんが仕事で忙しく来れないからと毎回お祖母ちゃんが来てくれていた。


 着物を着てくる親なんかいないのに、綺麗に和装したお祖母ちゃんが嬉しかった。私の成長の節目にはこの着物を着たお祖母ちゃんがいた。


 並んで歩く学校からの帰り道を思い出すとまた涙が溢れた。
 思い出はどれも優しすぎる。


「後から美羽の喪服も用意しないと。着物にする?それとも洋服にする?」


「一度マンションに戻ってから喪服を取ってくる」


「そうね。その方がいいわ」



 しばらくお祖母ちゃんの傍にいて、私は一度自分のマンションに戻ることにした。喪服も取ってこないといけないけど、会社にも連絡をしないといけない。時計を見ると夜の10時を過ぎていた。


 私は葬儀場でタクシーを待つ間、高見主任の携帯に電話を入れた。いくら小林さんが言っておいてくれると言っても自分でキチンと連絡しないといけないだろう。


 私が高見主任の携帯に電話して、何コールもしないうちに高見主任の穏やかな声が私の耳に届いたのだった。
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