初恋 二度目の恋…最後の恋
 折戸さんはビールの入ったジョッキに何度も口を付けるけど、全く顔色は変わらず穏やかなまま。今まで、折戸さんが焦ったりしたのはみたことはない。私に向けられた視線はとっても優しくてドキッとしてしまった。


「美羽ちゃん。蒼空のことどう思う」


 転勤が発表されて肝心のフランスの話が出てきたと思ったら、今度は小林さんのこと。このタイミングで小林さんのことが出てくる理由が私には分からない。もしかしたら…弟のように可愛がっている小林さんのことを心配しているのだろうか?


「いい人だと思いますし、無邪気に笑う優しい人だと思います」


「無邪気かぁ。今の蒼空は美羽ちゃんの言うとおりだね。でも、初めて営業一課に配属になった時の蒼空はちょっと今とは違うかな。人当たりがいいのは今と変わらないけど、転属してきた頃の美羽ちゃんにそっくりだったんだよ」


「私にですか?」


「いつも我慢ばかりしていて、自分を表現するのが不器用で、それなのに必死で前向きで。普通、いくつかの支社を経験してから営業一課に転勤してくることが多いけど、蒼空は新入社員の時からずっと営業一課なんだ。それがどういう意味か分かる?周りからの期待が大きかった分、蒼空は大変だったと思う」


 折戸さんの語る小林さんは私の知る小林さんとは違うような気がした。でも、あの優しく無邪気な笑顔が小林さんの努力の結果なのかもしれないと思うと、胸が少しだけキュッとなる。

< 215 / 303 >

この作品をシェア

pagetop