初恋 二度目の恋…最後の恋
 恋愛経験が全くない私でも折戸さんと結婚したら幸せになれるということは分かる。それなのに私はなんで折戸さんの言葉に頷けないのだろう。


 それは多分、私の中での『好き』は恋愛の『好き』にまで到達してないからだと思う。でも、折戸さんが言ったようにお見合いで結婚する人もいるのでそれはそれでアリなわけで…。結局は自分で決めないといけないということだった。



 ずっと研究をしてきたからか、私は物事を納得出来ないと動けないというのが沁みついている。不器用過ぎる自分の性格だけど、今更仕方ない。でも、もう決めないといけない時期になっている。


 折戸さんのこともだけど、今は静岡研究所に転属の話も来ている。


 お祖母ちゃんが亡くなった今、私が東京にいることに固執することはないけど、営業一課に転属して来て少し慣れて仕事も面白くなって来ていたところでもある。営業という仕事が分かって今まで頑張ってきた研究というものがどれだけ大事なものだったかが分かったのはよかったと思う。

 
「もう決めないといけないと自分では分かっているんです。でもどうしたらいいか分からなくて」


「そっか」


「実は静岡研究所からも急に辞めた研究員の代わりにですが戻って来ないかとの話も来ています」


「え。聞いてないよ。それマジ?」


「はい。話を貰ったのはちょっと前で、断りを入れないと、辞令が出ると思います」

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