初恋　二度目の恋…最後の恋
　少し落ち着いてから部屋に戻ると、折戸さんは今日二度目のメソポタミアの楔形文字のレクチャーを受けている折戸さんが居た。さっきもあんまり良さが分からないと言っていたのに、二回目も聞いているのは折戸さんの優しさからだろう。


　個人的には興味のある内容かもしれないが、世間一般にはちょっとという事も、折戸さんは穏やかな微笑みを浮かべながらも聞いていた。


「やっぱりあの人には敵わないのかな」


　小林さんは呟きのような小さな声を吐くと、天井を見上げた。そして、すっきりとした顔を私に見せる。


「プレゼントを渡そう。今日はみんな飲み方が凄いから分からなくなる前に渡した方がいい」


　私もそうだと思った。高見主任だけをとってみても、危険区域は徐々に広がっているし、柴田さんにしても北井さんにしても折戸さんが話を熱心に聞いてくれるからか、話しながらもドンドンビールを飲んでいる。


　そんな状態だったら、プレゼントなんかはうやむやになりそうだった。小林さんの判断に私は頷くと自分のバッグの横に置いてある紙袋を持ってくると、小林さんはそれを見計らったかのように声を出したのだった。


「折戸さん」


　そんな小林さんの言葉に折戸さんは振り向き、急に部屋が静かになる。私の手に持っている紙袋で、今から何が行われるのかが分かったのだろう。


「これはみんなからのプレゼントです。フランスに行っても頑張ってください」


　そんな小林さんの言葉にそって、私は折戸さんに買ってきた紙袋を差し出したのだった。

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