初恋 二度目の恋…最後の恋
「それくらいならよかった。俺は昨日の夜まで死ぬ思いをした。美羽ちゃんを送ってから自分のマンションに帰ればよかったと何度思ったことか」


 小林さんの言葉に金曜の夜に何があったのか気になってしまう。私が送って貰った時間もかなり遅かったので、あの後小林さんが二次会の会場に戻ったとしてもそんなに時間はなかったはず。


「小林さんも二日酔いですか?」


「俺はスペシャル三日酔い。あの後、高見主任と折戸さんに可愛がられて…。マジで半分記憶がない」


 三日酔い?そんなに長引くほど飲むってどのくらい飲んだのだろう。前に高見主任のマンションで一緒に飲んだ時もあんなに飲んでも二日酔いだったはず。それなのに、三日酔いって…想像が出来ない。それにどうやって帰ったかも記憶もないほどって…。



「記憶が飛ぶって本当にあるんですね」


「ああ。俺はどうやって帰ったことすら分からないから。でも、高見主任も折戸さんも俺以上に飲んだのに普通でさ。」


 そんな話をしていると、朝の朝礼が始まった。高見主任は思いっきり仕事モード。金曜日のキラキラ光線を放っていた人と同一人物とは思えないくらい。でも、端正な顔も声も変わらないのにはっきりと違う。そんな高見主任の聞き惚れそうなほどの声が読み上げるのは今月の数字。


 一切の甘さは無く、非常と言うべきほどの数字の羅列に息を呑みそうになる。さすがは営業一課としか言いようがない。月の半ばにして営業一課としてのノルマは既にクリアしていた。転勤を控えた折戸さんもこなしているのは凄い。


 例外はないみたいだった。


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