初恋 二度目の恋…最後の恋
 そして、土曜日。折戸さんのフランスへの出発の日になっていた。私は朝起きると、大きな溜め息を零す。それは木曜日、最後の出勤の時に、空港には見送りに来ないで欲しいと言われたからだった。一緒に付いて行く行かないに関わらず、空港に見送りには行くつもりだった。でも、木曜の夕方に言われた言葉が躊躇される。


『美羽ちゃんが来たらフランスに行きたくなくなる』


 でも、どうしても見送りに行きたくて私は用意を始めていた。とっても優しくしてくれた人だから…せめて見えない場所でそっと見送ろうと思ったからだった。見送りに来ないでいいと言われたのに私は成田国際空港のロビーにいる。


 雑踏の中、私は国際線のパリ行きの出発ロビーの近くにいた。人混みは苦手で人酔いしそうになるけど、それでも辺りを見回して折戸さんの姿を探している。見送りたいという気持ちだけでここにいるから折戸さんに連絡が出来るはずもなく、出発ロビーの端で折戸さんの姿を探す。


 でも、時間が経つ度にたくさんの人で溢れているこの場所で会えないかもしれないと半分諦めだしていた。折戸さんの乗る飛行機の搭乗手続きが終わってしまったら、展望フロアに行って、飛行機が離陸するまで見送るつもりだった。でも、一目折戸さんに会いたい。


 どのくらい探しただろう。もう、フランス行きの搭乗が始まっている。ロビーで必死に折戸さんの姿を探すけどどこにも居ない。もしかしらもう既に搭乗した後かもしれない。そんなことを思うと悲しくなる。早く来たはずなのに間に合わなかったのだろうか。



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