初恋 二度目の恋…最後の恋
『東京北研究所を閉鎖し、静岡研究所に統廃合します。社員は静岡研究所の配属になります。希望があれば他の部署の転属も受け付けます。なお、転属スケジュールに関しては各課の主任に問い合わせること。

 いきなりのことでで戸惑うこともあるとは思いますが、前向きに受け止め……』


 所長の放送の最後の方は私の耳には届かなかった。東京北研究所が無くなり、静岡研究所に統廃合される。静岡研究所は全国の中枢となるべき研究所として、何年か前に設立され、機材は最新式を用意されている。新しい機材が配備される度に羨ましいと思ったものだった。


 でも、まさかこんな統廃合が後ろに隠れていようとは思わなかった。


 研究所の統合は経営の合理化という名のリストラ??なのだろうか?平穏に歩いてきた私の人生に荒波が訪れた瞬間だった。


 坂上美羽(サカガミ ミウ)…24歳。


 会社に入って二年目の出来事に目の前が真っ暗になっていた。少しでも気持ちを落ち着かせようと研究室を出ると同じように研究員が何人も廊下に出ている。普段は殆ど誰も居ない共同スペースにたくさんの人が集まっている。


『どうしよう。急に転属だなんて』


 そんな言葉が私の耳に届く。でも、私は急にさっきまでの揺れていた気持ちが急に沈んでいくのを感じた。私は何も言葉を発せずに自分の研究室に戻り、少し濃いめのコーヒーを淹れた。苦いくらいに濃いコーヒーを飲むと少しだけ気持ちが落ち着く。落ち着くというよりは諦めに近い。


 私は目の前にあるパソコンを見つめた。さっきまで、打ち込んでいた研究データがそこにはある。完成にはほど遠いけど、順調に進んでいるもので…時間さえあれば、いい成果が上がるという手応えを感じていたものだった。



 
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