初恋 二度目の恋…最後の恋
『これは完成させられないのね』


 そんな言葉を呟きながら溜め息が漏れた。それは他の研究員のように『どうしよう』という選択肢が私にはなかったからだった。



 仕事を続けたいけど、静岡に行くことがどうしても出来なかった。それは静岡に行くのが嫌なのではなく、今は行くことが出来ないということ。


 この研究はここで終わる。


 私は共働きの両親の代わりに父方のお祖母ちゃんに育てられた。


 そのお祖母ちゃんが去年の冬から体調を壊して入院している。今は小康状態だけど、何時急変するか分からないような状態で、信じたくはないけど、医師から余命も宣告されている。そんな今、東京を離れることなんか出来ない。大事なお祖母ちゃんを少しでも寂しい思いをさせたくないと思うから…静岡には行けない。


 私に残された選択肢は『同じような研究職を探す』と『他の課に転属する』だった。



 この東京のどこかに今と同じような研究職があるかもしれない。でも、そんな会社があったとしても私を雇ってくれるだろうか?たった二年しか研究室に勤めてない私にキャリアなどなく、新人と変わらない。氷河期な今、それは困難を極めるのは目に見えている。


 となると…冷静に考えると残ったのは『転属』しかない。でも、研究に未練がある。でも、転属をする。それしか私には残されていない。



 第一希望は総務。第二希望は経理。事務職はしたことがないが、パソコンが出来るのでどうにかなるのではないかと思う。所長は私が転属願いを出したことに大層驚いたようだった。私のような研究に没頭するものが転属願いを出すとは思わなかったのだろう。


 何度も止められた。
 研究職と事務職は違う。それがわかっている所長は私の心配をしてくれていた。

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