強引男子にご用心!
「俺はサボりだよ、サボり。ここは人が来ないから」
「全く来ないわけではないです」
「あー……それは知ってる。だけど滅多に来ないだろ」
それはそうですけど。
「とりあえず起き上がるから避けてろ」
言われた通りにドアまで下がると、ファイルを落としながら立ち上がる磯村さん。
自ら被ったホコリを払ってからくしゃみをする。
「あの、クリーニング代金……お支払します」
「んなもんは別にいい。今日は外回りじゃねぇし」
「あ、あの。すみません」
「そう思うならキスくらいさせろ」
「む、無理」
小さく答えると、磯村さんは落ちたファイルを拾い上げて眉をしかめた。
「適当に突っ込むぞ」
「な、何を?」
「何をって、ファイルに決まっ……」
視線が合って、ニヤリと邪悪な笑みをする磯村さん。
な、なに。
「お前はエロ乙女か。何を突っ込まれると思ったんだ、ばぁか」
「な、なにも思ってないですし! ファイルだと思いましたし!」
「あー、そうかそうか。そういう事にしておいてやる。どっちにしろ、眼鏡にマスクに手袋つけてる女は、俺がヤル気にならないから安心しろ」
言いながら、ファイルをしまい終わり、段ボールを元に戻す。
本当に適当に戻したみたい。
後で整理しに来よう。
「今日は……ゴーグルと三角巾はしないのか?」
「今日はどこにあるか覚えてますから。探さなくてもいいですし」
「こんなゴタゴタしてんのに、よく覚えてるな」
暇があれば整理してましたし。