恋愛戦争
夢も見ない爆睡でなかなか朝起きられずにいる俺でも、その日は爽快な目覚めだった。
起きてすぐ、歯を磨いて顔を洗ってぱぱぱっと身支度をしたら適当な服に着替えて終わり。
あとはストーカーよろしく隣のお宅訪問に行くだけである。
ピンポーン
カチャ、となったのは玄関のドアではなくインターフォンから聞こえた機械音。
「俺だよ俺俺」
「詐欺には間に合ってます」
「なんだよ詐欺に間に合ってるって」
「お引き取りください」
「セールスみたいに扱うな」
「似たようなものでしょ、迷惑商法」
「俺は高いよ?」
「いらないです」
あと何時間この攻防戦か続くのか。
このまま扉の前で待ってやろうかと犯罪もいいとこの思考回路にたどり着く危ない俺。
「あーきーらー」
「うるさい」
「一緒に行こ?」
「やだ」
「いいじゃん、俺どうせ事務所に用事あったしついでに送らせてよ」
用事なんて全くの嘘だけど。
インターフォンの機械越しに、彼女が動いたのがわかった。
そして数秒後扉が開く。
「そこにいられても迷惑だから、さっさと入って」
「はーい」
このツンデレも堪らない。
まだ用意の途中だと言う晶はカメラを数個とノートパソコンの類をテーブルの上に出していたようだ。
「ナツって、ずるいよね」
「え?」
「なんでもない」
ラグに腰掛けた俺に呟いた彼女はそれだけ言うとなんでもない、とキッチンへと消えた。
ずるいって、何が。
はっきり聞こえていたけれど、それ以上の会話が怖くて追求できなかった。
黙って後ろ姿を目で追って、消えそうな影を見つめていることしかできない。