恋愛戦争
「食べたら吐く」
新手の脅迫文を考えついた彼女は病的に訴えると、そそくさとパプリカの沈むそれをテーブルの端に追いやる。
「じゃあ今日はそれでいいよ。食べれるようにもうちょっと工夫する」
「給食みたいなことしないで」
「俺にいま与えられている使命は晶の栄養管理だと直感した」
「それは管理栄養士さんに頼むからいいよ」
「雇ってんの?」
「未来の話」
「今の話をしろ」
馬鹿馬鹿しい会話を繰り広げ、食事はあっという間に終了する。
時計の針は進む。
「ほら、さっさと歯磨いて行くぞ」
「主導権握ろうとしないで」
「はーい」
冷たい視線を浴びながら余ったものにはしっかりラップをかけて出来る男アピールも忘れない。
シンクに片づけた食器に手を付けようとすると、昌が面倒くさそうに立ち上がる。
「いいよナツ、作ってくれてありがとう。片づけくらいやる」
「なにそれ、初の共同作業みたい」
「誤解を生む発言には気を付けてね」
なにを話しても痛烈な返し。またそれもいいと思っているⅯな気質がある俺。気持ち悪いことこの上ないので、黙っていよう。
ジャー。
水が流れる音を聞きながらキッチンにて昌の背中を眺める。
「ナツ、気が散る」
「えーいいじゃん。女の子の背中って無防備で、いい」
「そんなこと聞いてない」
「じゃあなにすればいい?」
スポンジ片手に振り返った不満顔。
「バスルームの洗面台の棚に歯ブラシのストックあるから」
「……(昌って、含ませた言い方するよなぁ)」
「なに?」
「歯ピッカピカにしてくるね」
「行ってらっしゃい」