恋愛戦争
きょとん、と彼女には珍しい顔をすると首を傾げる。
「ナツは息を吐くみたいにナンパするんだね」
俺の言葉はあらぬ誤解を生んでしまったようだ。
その一言だけで、じゃあ行こうか。なんて言われて言い訳もできないし、言い訳したところで誤解を解くには俺の女性遍歴も関わってくるわけで。
美しい晶に、俺の汚い性歴なんて話したら汚してしまう。黙っていよう。
「貸して、持つよ」
「自分の荷物は自分で持つ」
ノートパソコンとカメラ、数種類のファイルの入った重そうなカバンを片手に持つところに、入り込む。
「ナツ、いいって」
「車まで」
「尚更いいよ」
「うるさい晶、ちょっとくらい俺に格好つけさせてよ」
こんなことで格好もクソもない。
そう分かっていても口から出る非難の声は、俺が彼女に一切頼りにされてないことに対するクソガキの八つ当たり。
彼女は変わった。俺はなに一つ変われていない証拠である。
晶は少し困って、でも笑って。
「ありがとう」
押し付けがましい俺にお礼を述べてくれる。
俺の方がありがとうだ。
晶の頭をポンポンと撫でると、嫌がられなかったから安心した。
靴を履いてドアを閉めて鍵をかける。
絶対一緒に帰ってこようと決意した。
「ナツの車ってどんなの?」
「普通のだよ」
「ふーん」
全くといっていいほど興味がないようなので少し寂しい。
駐車場について所定の場所まで行くとまぁまぁ高そうな車がある。
「これ?」
「そうだよ」
「なんか、恰好良いってことは分かるんだけど」
「OK、詳しくないってことね」
全然OK、予想してた。
他の女の子はすごーい!高そう!これってどこの車?CMに出てるやつだよね?
とキャーキャーなるものだが、晶には似合わない。うん、だからいいんだと自分に言い聞かせる。