Grab



降りしきる雨の中、この人は人を傷つける人だと思った。


初めて会った人にこれ以上ない恐怖心を抱いた。




「……」


早く消えてほしいのに。

じゃないと私は動けないのに。

彼は私を睨みつけ、見据えたまま動こうともしない。



「…ご、ごめ…なさぃ…」


何か言って逃げようと思って、出た言葉はそんな謝罪の言葉だった。



「……は?」


より一層眉間にシワが寄って、こちらを睨みつける。

この時、殺気というものを知り、感じた。


それを感じたら、もう何も言えない。



「…お前、この街から消えろ」


そう告げてから彼はその場を去った。







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