Grab



一人暮らしも1ヶ月経てば順調にこなせるようになってきたので、バイトを始めることにした。

どんなバイトにするか、なんてこだわりもなく、ただバイト募集中を探して1軒見つけた。


イタリアンのレストランに昨日、電話をかけて面接を取り付けてもらった。


学校が終わった今、そのお店の前に立っている。

綺麗な外装をした、洋式の建物で、ちょっとだけ高級感が伺える。



「いらっしゃいませ」


中に入ると、男の人が紳士的な笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ってきた。



「あの、アルバイトの面接に来たのですが」


「あ、はい。伺ってます。こちらです」


そのバイトっぽい男の人は厨房に声をかけると、私に笑いかけ、背を向けて進んでいった。

スタッフルームを抜け、廊下を進むと階段があって、そこをまた登っていく。


登ってすぐのところにオーナールームと書かれた所があった。

男の人がその扉をノックすると、中から「なに」という返事があって、男の人は言う。



「面接の子が来ました」


「あー、入れて」


女の人の声だった。







< 5 / 19 >

この作品をシェア

pagetop