僕と三課と冷徹な天使

月曜日

月曜日、意を決して会社へ向かう。

絶対からかわれるだろうなあ・・・

特に吉田さん。

新歓で泥酔して寝てしまったことを
一日中言われそう。

ところが、誰も何も言わなかった。

遅刻してきて、
サボりながら仕事をする
いつもの三課だった。

意外だったので、ランチタイムに
コオさんに聞いてみた。

「みんな新歓での僕の失態を
 忘れてくれたんでしょうか?」

「新歓の後、二次会に行ったら
 あっこが女王様になっちゃって
 大変だったみたい」

えー・・・それは強烈だ。

僕は寝てしまって良かったのかもしれない。

「灰田が寝て大変だったのは、わたしだけ」

と言ってコオさんはニコニコ笑った。

怖い・・・

「本当にすみませんでした」

誠意を持って謝る僕。

「うん。今度は手作りの角煮が食べたい」

「あ、はい」

そんなことならお安い御用だし、
もしかしたらまた一緒に
家でごはんを食べられるのかもしれない・・・

にやにやしないように
昼ごはんに集中する僕だった。


屋上に行くと、森本が待ち構えていた。

僕の顔を見るなり

「どうだった?新歓どうだった?」

構ってほしくてよく鳴く、
実家の犬を思い出す。

「うん・・・飲みすぎて寝ちゃったんだ・・・」

嫌な思い出だったが、
森本には話さないといけない。

たくさん相談に乗ってもらったからなあ。

泥酔してコオさんに家まで送ってもらい
次の日、鍵を家まで届けさせたこと、
お詫びにチャーハンをご馳走したことまで
正直に話した。

自責の念にかられて暗くなっている僕に
森本は言った。

「へ~・・・でも良かったじゃん。
 なんか進展した感じがするよね~
 いいなあ・・・」

そうかな?

二度と起きてほしくないけど。

「でもさあ、怒るよね。普通。
 大人の男を運ぶの、
 すごく重かったはずだよ。
 なのに、わざわざ家に鍵を届けて、
 しかも、チャーハンごときで
 満足して帰るって・・・
 コオさんにとっていいこと、
 ひとつもないじゃん」

やっぱり嫌いかも、こいつ。

復活しかけた僕の心が、
再び打ちひしがれる。

すると、森本が深刻な顔をして言った。

「・・・もしかして、もしかすると・・・
 コオさん、本当は・・・」

ん?

・・・本当は何?


「・・・
 すごく優しい人なのかもね!」

森本は満面の笑みで言った。

なぜか拍子抜けな気持ちになったが

「うん、本当はすごく優しいんだと思う」

と僕も激しく同意した。
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