今度こそ、練愛
高杉さんの言った通り、今日はお客さんが少なめでのんびりと過ごすことができていた。
ゆったりと店内の花を見て回りながら花の名前を覚えたり、アレンジメントを作っている高杉さんのお手伝いをしたり。私も早くひとりでこなせるようになりたい。そんなことを考える余裕だってある。
つい時間を忘れかけていた頃、店のドアが開いた。
すらりと伸びた背丈に黒いスーツを纏った山中さんが、にこやかな笑みを私たちへと見せる。店内の掛け時計を見上げたら、午後二時を過ぎたところ。
「お疲れ様です、待っていました。ショーウィンドウの花は見てくださいました?」
高杉さんが呼び掛けると、山中さんがショーウィンドウの方へと振り返る。
「見せてもらったよ、とてもいい感じだったから驚いたよ」
感心するような笑みを含んだ山中さんの声。
褒めてもらえたことが嬉しくて、すぐに仲岡さんを振り向いた。ばっちり目が合うと仲岡さんは笑顔で大きく頷いてくれる。
「そうでしょう、二人ともよく頑張ってくれたのよ。私は全然手は出してないからね」
「本当にアドバイスだけ?」
「ええ、花も色も構図も二人で考えてくれたの、白が映えて綺麗でしょう?」
あまりにも言われると恥ずかしい。