今度こそ、練愛

これ以上何を聴かれるのかと身構えていたら、ふっと口元に笑みが浮かんだ。



「ショーウィンドウの花、よく似合ってたよ。大隈さんが考えたの?」



やっと視線が逸れて、山中さんがハンドルを握る。車がゆっくりと動き出して、背中が背もたれに沈み込む。



「ありがとうございます、仲岡さんと二人で考えたんです。シンプルに白を使いたいと思って」

「うん、華やかな色もいいけど主張し過ぎない白がよかったよ。メインに使ったカラーが凛として清潔感があったし……カラーを選んだのは大隈さん?」

「あ、はい……、でも白を使うのは仲岡さんと一緒に考えたんです。まだ花の名前も覚えられないんですけど自信がつきました」



あれ? 
もしかして山中さん、カラーに引っ掛かった?



ちょっと追及したいところだけど、ぼんやりした頭では上手く言葉が浮かばない。



「やっぱり……ちょっと意地悪したかと思ったけど自信を持ってくれてよかったよ、花の名前は焦らなくても自然と覚えるよ」

「はい、頑張っていきます」



答えて大きく頷いたら、頭の中がふわんとした。視界が揺れて気持ち悪くなって俯いたら、スマホを手に握り締めたままだった。






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