今度こそ、練愛

「大隈さん、どうしたの?」



ふいに投げ掛けられた山中さんの声に驚いて、背筋がぴんと伸び上がる。



「あ、すみません……」

「山中さん、聞いてください。今朝は有希ちゃん、すごく大変だったんですよ」



謝る私の肩を抱いて、仲岡さんが進み出た。
隣りにいる高杉さんも腰に手を当てて大きく息を吐く。今朝のことを思い出して、憤っているのがよくわかる。



「仲岡さん、私から話すわ」



高杉さんが今朝の出来事を話す。声のトーンをできるだけ抑えながら、感情的にならないように気遣ってくれている。
岩倉君と私から聞いたことを上手く纏めて話し終えると、山中さんも溜め息を溢した。



「悪質な悪戯だ、誰がそんなことを……」

「そうでしょう? この雨の中、有希ちゃんが探しに行ったんですよ? 岩倉君だって急いで作ったのに酷いと思いません?」



再び仲岡さんが熱くなって怒りだす。
私だって怒りたい。でも、それよりも騙されたことが悔しい。



ふと振り向くとカウンターの裏側に居た岩倉君が、少し離れたところで私たちの話を聴いている。岩倉君も沈んだ表情で、ショックが大きかったことが窺える。



「岩倉君も大隈さんも、今回のことは災難だったと思うしかないわ、早く忘れましょう」



明るく努める高杉さんの声が背中を押してくれるけど、まだ浮上できそうにない。


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