今度こそ、練愛

「作った花はどうしたの?」



黙って聞いていた山中さんが、高杉さんに問い掛ける。



「事務所に置いてます、一度は注文を受けたものだから店に出すのもどうかと思って」

「見せてもらってもいい?」

「いいですよ、岩倉君が特急で作ったいい作品よ」



高杉さんが山中さんを事務所へと案内する。
見届けた岩倉君はカウンターの裏側へと戻っていく。仲岡さんと私はカウンターに留まったまま。



「有希ちゃん、元気だそうよ。誰も悪くないんだから」



沈んでいく私を気遣う仲岡さんの言葉が、温かく包み込んでくれる。凍りつきそうな気持ちをゆっくりと溶かしてくれるけれど、浮上するまでには至らない。



しばらくして戻ってきた山中さんの手には、岩倉君の作った花が抱えられている。どこに持っていくのかと今にも問い掛けようとする私たちに向かって、山中さんが笑って返す。



「これは僕が貰うよ、大隈さん、ちょっと一緒に来てくれるかな」

「え、私?」



いきなり呼ばれて声を詰まらせてしまった。てっきり山中さんは、そのまま花を持って帰るのだと思い込んでいたから。
高杉さんに助けを乞うとにこやかに手を振るだけ。とんっと仲岡さんに背中を押されて、足が前に進み出る。



「エプロンを外して、コートを着ておいで」



花を手に抱えて、山中さんが私に微笑んでくれた。




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