今度こそ、練愛

間違えて発注してしまった花は十種類以上だった。
数種類は発注を取消したり他の店舗に譲渡することができたけれど、まだ十種類近く残っている。残った花は店舗の倉庫に入りきらないため、仕入れ先の冷蔵庫を借りることになった。



だけど、早く何とかしなければ枯れてしまう。



皆でいろいろ考えてみるけど、いい案は浮かばない。いい案どころか、私は罪悪感でいっぱいで何にも考えられるような状態ではなかった。
責任を取って、花を全部買い取る訳にもいかない。売れなくて処分することになれば店の損失は大きい。



「有希ちゃん、気を落とさないで、誰にでも失敗はあるよ」



仲岡さんの温かい言葉に救われる。
発注の作業手順を教えてくれた岩倉君は、自分の説明不足だったと謝って沈んだ様子。



ちゃんと確認したはずなのに……
今さら後悔しても、どうしようもない。



口を開けば出てくるのは溜め息ばかり。
私のせいで店全体が暗く沈んだ空気に包まれてしまっている。



「誰にだってミスはあるものよ、これからどうするか考えましょう」



朝からずっと事務所に篭って対応にかかりきりだった高杉さんが、ひょっこり出てきた。わざと明るく振る舞っているように思えて余計に辛い。






< 192 / 212 >

この作品をシェア

pagetop