今度こそ、練愛
日曜日の朝、妹と母がやって来た。
いつもよりお洒落した母はよそ行きの雰囲気。もちろん私の彼に会うことを意識しているらしい。
私の部屋に荷物を置いて、妹は結婚式に出席するため友人のところへ。母と私は彼との待ち合わせ場所へと向かう。
いつもの調子で母と話している私だけど、内心かなり緊張感している。
彼のことを『昭仁』と呼ぶこと、あんな無愛想な彼と話を合わせられるのか、途中で彼が怒ったりしたらどうしよう、いろんな不安が胸の中で渦巻いている。
約束の時間通りに駅に到着。
彼の姿を探して駅前のロータリーを見回す。車の種類を聞き忘れたから、どれが川畑さんの車なのかわからない。
タクシーと人待ちの車が数台停まっている中、一台の車から川畑さんが降りてきた。小型車だったからひと安心。その前に停まっている大型のセダンだったらどうしようかと思ったから。
すぐさま私たちへと駆け寄ってくる川畑さんは笑顔で、打合せの時とは違う雰囲気。
「あれが昭仁さん?」
「うん」
母に問われて頷いたけど、昭仁と呼ぶには抵抗がある。だって本物の昭仁よりも川畑さんの方が長身でカッコいい。