鬼部長と偽装恋愛はじめました
「そうだよ。本城は仕事も頑張ってるし、疲れが出たんだ。行こう。課長には、オレから言っておくから」

祐平は私の背中を軽く押し、部屋を出るように促す。

体調が悪く見えるのは、香坂さんに動揺したせいだ。

それなのに、医務室だなんてやっぱりできない。

「あ、あの部長。本当に大丈夫なので」

と言ったみたけど、祐平は半ば強引に私を促した。

医務室は、二階上の総務のフロアにある。

エレベーターに乗り込むと、祐平が言った。

「無理するなよ、香奈美。休むことだって大事だろ?」

「う、うん……」

でも原因が、“元カノの登場に動揺したから”では、後ろめたい。

フロアにつき、奥の医務室に行くと、産業医の先生が席空きでいなかった。

「先生には、オレから社内携帯に電話しとく。とりあえず、香奈美は休んでろ」

ベッドへ私を寝かせた祐平は、優しく頭を撫でてくれた。

「疲れが出たんだよ。いろいろあったもんな。体調が戻ったら、仕事を再開したらいい」

「うん。ありがとう……」
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