四百年の恋
 「領民の不満も、何もかもがでっち上げだったのではないでしょうか。冬悟さまをけしかけて謀反を起こさせようとしたのでは」


 「赤江がなんのために、そんなことを」


 「殿の意を受けて、冬悟さまを取り除こうとしたとしか……!」


 「兄が、なぜ」


 聞くまでもなかった。


 冬雅は常に、弟の冬悟が自分の地位を脅かそうとしているという猜疑心に駆られていた。


 「月光姫・・・!」


 そして、月姫。


 姫を決して手放さず、怒りのまなざしを向けて来る冬悟に、冬雅はさらに危機感を覚えたのかもしれない。


 (それゆえ腹心の赤江を使って私をそそのかし、謀反を仕向けた……?)


 そうとしか考えられなかった。


 ドンドン!


 「冬悟どの! ここを開けなさい!」


 屋敷を取り囲む部隊の長が、冬悟の屋敷の門を荒々しく叩く。


 「開けなければ謀反人として、このまま屋敷に火をかけますぞ!」


 徹底抗戦するにも、多勢に無勢。


 何もかも赤江任せで、屋敷周辺の警護は手薄だった。


 立てこもりなどすれば、屋敷の者たちにも害が及ぶ。


 冬悟はおとなしく、囚われの縄につく決意をした。
< 208 / 618 >

この作品をシェア

pagetop