四百年の恋
 「えっ、先生が?」


 驚く美月姫。


 「うん、大人の男性って感じで」


 「確かに先生は若く見えるけど、年齢的には私たちのお父さんに近いんだよ」


 美月姫の父親はもう50近いが、クラスの子の中には父親がまだ40そこそこって子もいる。


 「ま、先生は独身だし。私たちが未成年ってことを除けば、問題ではないけど」


 美月姫がそう結論付けた途端、


 「ところで……。先生が独身を貫いている理由って、聞いたことある?」


 友人の一人が切り出した。


 「ううん、知らない。何か理由があるの?」


 美月姫の問いに、友人は頷いた。


 「ところで先生って、バツ付いてる(離婚歴がある)の?」


 別の友人が口を挟んだ。


 「いや、ずっと独身を通しているんだって。昔の恋人が忘れられなくて」


 「えっ!」


 美月姫は驚いて手を滑らせ、お茶をこぼしそうになった。


 「うちのおじさんが、先生と同時期に同じ大学に通っていたんだ。当時大学では、一代センセーションを巻き起こしたらしいよ、あの事件……」


 友人は語り始めた。


 先生は恋人と、楽しい大学生活を送っていた。


 そこに謎の、美しい男が現れた。


 男は「君は前世は自分と相思相愛だった」と告げた。
 

 やがて恋人は先生を一人残して、男の後を追うように黄泉の道へと消えていったという。
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