四百年の恋
 「丸山、乱雪……?」


 当然、美月姫も知っている。


 この辺りを地盤とする有力政治家で、総理大臣すら逆らうことができないほどの実力の持ち主……。


 「清水くんが、丸山乱雪の子供……?」


 美月姫ははじめて聞いた。


 「でも名字が」


 なぜ丸山姓ではないのか、疑問に思った。


 「正妻の子じゃないんだって」


 「……てことは、側室の?」


 「やだ美月姫ったら。側室、だなんて。時代劇みたい」


 「今風に言えば不倫相手? っていうか愛人か」


 「そう、清水くんは丸山乱雪が、こっちのホステスに生ませた子供なんだって」


 「びっくり……。でもそれって週刊誌沙汰になったら、丸山幹事長は辞任レベルじゃないの?」


 美月姫ははらはらしながら、友人に尋ねた。


 昔の政治家には妾とか隠し子とか、よくありがちな話だったけれど。


 今は男女関係がルーズな政治家は、マスコミに叩かれ、職を終われることもしばしば。


 「ほら……。この辺りは丸山王国じゃない? マスコミも怖がって書けないらしいよ」


 「書いてももみ消されるだろうしね……」


 美月姫は衝撃を受けた。


 あの清水が、そんな複雑な家庭の生まれだなんて。
< 355 / 618 >

この作品をシェア

pagetop