四百年の恋
 先ほど清水が丸山幹事長の息のかかった者と思われる誰かに電話をしていたのを、圭介も見ていた。


 不本意そうな表情で。


 おそらく清水は、父親とはいえ丸山幹事長の世話にはなるべくなりたくないと考えているのだろう。


 だが今回の事件。


 そのままではウサギたちの惨殺は、犯人は捕まらないままで終わるのは明白。


 そこで父親の権力に頼ったのだ。


 丸山幹事長の耳に入れば、動きは早い。


 息子の頼みとあらば、張り切って警察を動かしたのだろう。


 そして通常では考えられないようなハイテク捜査が執り行われ、間もなく犯人は捕まった。


 なんと市内に住む高校生。


 聖ハリストス時代の受験に失敗したのを、未だに根に持っていたらしい。


 自分の努力不足を学校側に責任転嫁。


 恨みを募らせ、その矛先が弱者であるウサギたちに向けられたようだ。


 自分の家で飼っている猟犬を伴い、夜の校舎内に侵入。


 金網をペンチで破り、そこから犬を小屋の中に放り込んだ。
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