四百年の恋
 先生と一緒にいると、落ち着く。


 先生と一緒にいると、癒される……。


 美月姫の感情は、徐々に変化していった。


 だがこれを表立てては、圭介に迷惑がかかると思い、美月姫は抑えていた。


 相手は元担任。


 しかも20歳近く年上。


 (年齢なんて関係ない。芸能人でもあのくらいの年齢で、若い人も多いんだし)


 圭介と同年代の男性には、安楽な家庭生活に甘えきってしまいメタボ一直線、おじさんぽい人も多い。


 (だけど先生は、全然違う)


 部活動の始動とはいえ、日々運動に励んでおり、体を鍛えているので若々しい。


 所帯染みていないのもあり、年齢よりも七~八歳は若く見えた。



 (私がもっと大人っぽくなれば、年齢さも感じられないかも)


 次の誕生日で、美月姫は19歳。


 早く大人になりたいと願った。


 大人。


 その言葉で美月姫はまた、優雅のことを思い出してしまう。


 (私の体だけを奪って、何も残してくれなかった人……)


 成り行きで体を与え、処女を失ってしまったにもかかわらず、男に深く愛されたという実感が美月姫には欠落していた。


 (愛されたい)


 もう二度と、優雅への想いは叶えられないと予想される現状。


 一生彼だけを想い続けると誓う強さは、彼女は持ち合わせていなかった。


 次にもし誰かに愛される時は、心の奥底から満たしてくれる男がいいと願い始めていた。


 果たせぬ愛のつらい記憶を、全て消し去ってくれるほど激しく。
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