四百年の恋
 「これは……報い」


 全てを悟った。


 福山冬悟と月光姫。


 (俺が余計なことをしなければ、あの二人は引き裂かれることはなかったのに……)


 魅力的な異母弟に嫉妬心をずっと抱いていたのもあるが、軽い嫌がらせ目的で無理難題を吹っかけただけだった。


 春の精のような姫を、ただ愛しいと思っただけだった。


 (それがなぜこんな……)


 今思い返せば、全てが定められた運命だったのかもしれない。


 そもそもなぜ圭介は、ここ函館の大学に進もうという気になったのか。


 首都圏の私立大学からさらなる好条件の推薦入学の話があったにもかかわらず、それらを全てお断りしてまで、函館の国立大学を選んだ。


 高校生の頃、部活の遠征で初めてこの地を訪れた際、なぜか心惹かれて。


 何かに引き寄せられるかのように、大学進学を機に函館の地へ。


 まるで故郷のように、懐かしく感じられた街並み。


 伝統ある街だからだと思い込んでいたけれど、封印されていた記憶が蘇った今。


 全ての謎が解けた。


 と同時に、犯した罪の重さに打ちひしがれる事しかできない。
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