四百年の恋
 どんなに悔やんでも、過ぎた時はもう取り戻せない。


 (罪を償わない限り、俺はまた同じことを繰り返すだけだ)


 同じ過ちを。


 その時圭介の脳裏に、美月姫の顔が浮かんだ。


 愛しい人の面影を十分に湛えた、可愛らしい笑顔。


 何の因果か、圭介を愛し始めている。


 (このままでは……)


 今の流れでは、おそらく次に会った際に一線を越えてしまうだろう。


 容易に想像がつく。


 自分自身も愛しさに抗えないし、美月姫のほうももう情熱の炎からは逃れられないだろう。


 「愛してほしい」という無言の叫びが、美月姫の全身全霊から感じ取れる。


 それは清水優雅を失ったことに対する、悲しみの表現からの発展形であるのは明白とはいえ。


 (このままでは、また同じことの繰り返しだ)


 その気になればすぐにでも、美月姫の体は奪える。


 だがその後。


 必ずつらい別れの日が訪れる。


 前世の因縁に操られる形で。


 ……圭介の、というより福山冬雅の罪は、まだ償われてはいない。
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