勝手に百人一首
国のために、エレティナも自分も、全てを諦めて耐えなければならないのだ、と思った。




それが、王女であるエレティナに、そのエレティナを愛した自分に、架せられた運命だ。





もしも自分とエレティナが、許されざる恋を成し遂げようとすれば―――国家反逆者として、二人とも死罪は免れない。





―――そう自分に言い聞かせ、レイモンドは必死に、エレティナを諦めようとした。







(………でも、できなかった)






勉強しようと書物を紐解いていても、息抜きに詩集を開いていても、好きな絵を描いていても、エレティナの顔が常に頭の片隅から離れなかった。






夜ごと、夢の世界へ行くたび、エレティナが現れた。




昔のように無邪気な笑顔で跳ねまわっているときもあれば、寂しげな顔でただじっとこちらを見つめてくるときもあった。






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