勝手に百人一首
それを見た瞬間、心臓を鷲掴みにされたように、エレティナの呼吸が止まった。





レイモンドも、月明かりに浮かび上がる白い姿に息を呑んだ。






エレティナは何も考えず、ベランダの手すりに飛び乗った。





幼い頃から王宮の庭を駆け回っていたエレティナにとっては造作もない動作だったが、レイモンドは慌てて駆け寄る。





その腕の中に、エレティナは思い切り飛び込んだ。






「ーーーレイモンド!!」






なんとか受け止めたレイモンドは、ほっとしたようにエレティナの頭をかき抱いた。






「なんて無茶なことを………危ないじゃないか、エレティナ」






「だって………」






エレティナはレイモンドの胸に頬を強く寄せ、震える声で呟く。






「夢みたい………」







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