年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
祥裄が無言で大輔くんに近づいた。大股で歩くその後ろを私も一瞬遅れて追う。


「どうも。わざわざ送ってもらって悪かったな」


「こちらこそ。お待たせしたようですみませんでした」


二人ともいつもより声が低い。イヤミの応酬のような会話に含まれるお互いに対する挑発が、見ている私をヒヤヒヤさせる。

「間近で見たらえらく可愛い顔してんな」

長身の祥裄が大輔くんを見下ろすようにする。大輔くんだって背が低いわけじゃないのに、五センチくらい祥裄の方が上だった。

「ちょっと、何言って……」

「褒めていただいて有難いですけど、俺にそういう趣味ないんで。そちらこそモテそうな顔ですね。実際遊んでるみたいだけど」

「可愛い顔の美容師さんには勝てませんよ。客なんて女ばっかだろうし、年上のお姉さんなんて、甘えた顔でも見せりゃ一発で落ちるだろ」

「お客さんに声をかけたりなんかしません」

「どうだか。真面目なフリしてよりどりみどり楽しんでるんじゃないの?」

「いい加減にしてよ、二人とも! 特に祥裄、大輔くんに失礼!」
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