年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
人知れずため息が漏れて、ポケットに手を突っ込むと、携帯が震えているのに気がついた。なかなか途切れないその震えに取り出して画面を見ると、母、の文字。こんな朝っぱらから一体何の用だろう。


「もしもし?」


適当に道の脇に立ち止まって電話に出ると、朝っぱらから元気なお母さんの声が聞こえてくる。

『もしもし、沙羽? あんた昨日どこにいたの?』

「どこって、瑞香の家に泊まった。今帰ってるとこだけど」

『また瑞香ちゃんにご迷惑かけてたのね。電話しても出ないし、多方どこかで飲み歩いてるんだろうとは思ってたけど』

昨日の夜、携帯はカバンの中に放り込んだままだった。仕事以外では携帯を放置するこの癖、なんとかしなきゃなあ、とはいつも思うのだけど。

「別に迷惑なんてかけてないし。お母さんこそ一体何の用よ?」

『あんた昨日誕生日だったでしょう? 一言くらいお祝い言ってあげようと思ったのよ。どうせ祥裄くんとダメになって、寂しく過ごしてるんじゃないかと思って』

祥裄と別れたことは、お正月に帰省した時に言ってあった。
お母さんはものすごーくショックを受けたようで、なんであんないい子を手放したの、と散々お小言を言われたけど、浮気されて捨てられましたと報告するのも癪で、詳しい理由は話さなかった。
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