年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
ごめん、と呟いて手を引っ込める。

触れた額からは昨日感じた熱さは引いていて、安心した。

「熱、下がったみたいだね。よかった」

二人の間に流れた微妙な空気を払拭しようとぎこちなく笑うと、大輔くんも少し表情を和らげた。

「すみません、迷惑かけて。実は携帯がないことも、今まで気付いてなかったです」

ずっと朦朧としてました、と笑って言った。そこから言葉が繋がらなくて、また居心地の悪い沈黙が降りる。

何をしに来たんだ、私は、と、自分を叱咤した。
とにかく謝らなきゃ、でしょ?


「この前、ごめんね。その……いきなり泣いたりして」


顔は上げられず俯いたまま、それでもきちんと伝えなければと必死で言葉を探す。


「大輔くんと、そうなってもいい、って思ったのは本当なの。
ううん、そうなりたい、って、一緒にいたい、って思って。だから大輔くんを選ぼうって決めて……」

「でもまだ迷ってるんですよね?」


大輔くんが柔らかな口調で私の言葉を遮った。
顔をあげた私を、彼は穏やかな目で見ている。


「やっぱり嫌だ、って思ったんですよね? だから泣いたんでしょう?」


「大輔くんに触られるのが嫌だったわけじゃないよ。ずっと触って欲しいって思ってた」

「じゃあなんで泣いたんですか?」

「それは……」


「不安だから、ですよね?」


不安。……そう、あの時私を怯えさせたのはきっと、不安な気持ち。


「それに、あの時俺も、ちょっと余裕がなかったから。木下さんに取られたくない、早く沙羽さんを自分のものにしたい、って、焦ってたんです。きっと怖かっただろうな、って後から反省しました」


すみません、と謝る穏やかな声に、私は無言で首を振った。
謝らないでほしい、大輔くんはなにも悪くないのに。

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