年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「……木下さんに、プロポーズされたんでしょう?」
なんで知っているんだろう、と驚いたけど、すぐに辻井さんの話を思い出した。
「祥裄となんの話をしたの?」
きっと怖い顔になっていたんだろう、私の表情を見て大輔くんは小さく苦笑した。
「木下さんが本気だ、ってことを話されただけです。俺も少し、木下さんのことを誤解してたんですけど、その誤解も解けました。別に喧嘩ふっかけられたわけじゃないですから、あんまり怒らないでください」
「誤解?」
「もっと遊んでるというか、一人の人じゃ満足できない人なのかと思ってたんですけど。少なくとも沙羽さんに対しては真剣なんだな、ってことはわかりました。いい人ですね、頼りがいもありそうだし」
それに、と何か言いかけて、躊躇うように言葉を切った。
目を伏せて、口を噤む。
「大輔くん……?」
私が先を促すと、彼は黙ったままなぜかベッドから出て立ち上がった。
部屋の隅に置いてあったチェストに近づくと、一番上の引き出しからなにかを取り出して、戻って来たと思ったら私の後ろに座った。不思議に思って振り向こうとする私の顔をやんわりと押し返して、前を向かせる。
「それに、今俺に感じてるような不安は、木下さんに対しては抱かなくて済むから」