年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「大輔くんも。デート?」
その言葉にきょとんとしたけれど、私の目線が離れた葉月ちゃんに向いているのがわかると、少し困った顔をする。
「いや、そういうわけじゃ……」
「別に気を遣って隠さなくてもいいよ」
私が努めて明るく言うと、大輔くんは真顔になって私を見た。
それから一瞬だけ、私の心を見通すような鋭い目を向けてから、ふ、と柔らかい笑顔に戻る。
「……はい。付き合うことになりました」
少しだけ、否定してくれることを期待していた私を、はっきりとした肯定の返事が待っていた。
その答えに、私は勝手に打ちのめされる。
当たり前じゃない。近くにこんなに可愛い子がいて、二人とも若くて。
気軽に恋愛して、自由に楽しむ権利が、彼らにはある。
そもそも先に祥裄を選んだ私に、裏切られたような気持ちになる資格は、どこにもない。大輔くんにとって私は通過点で、きっと数ある経験の一つにしか過ぎないことなんて、わかりきってる。
なのになんで、こんなに心が痛いんだろう。
必死で取り繕った笑顔は、果たして成功しているのだろうか。
「お似合いじゃない。お幸せにね」
私の言葉に大輔くんは、さらに笑みを深めて言った。
「ありがとうございます。……沙羽さんも、お幸せに」
じゃあ、と大輔くんは葉月ちゃんのところへ戻る。
二人並んで歩き始めて、私たちとすれ違う時にもう一度、二人一緒に軽く頭を下げていった。