年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
平気な顔をして私も歩き始めたつもりだったのに、少し歩いただけで、その努力はあっけなく崩れ去った。

不意に涙が込み上げてきて、自分でもコントロールできない感情の波の強さに驚いた。こんなことで泣きそうになるなんて、今までの私じゃ考えられない。


大輔くんを手放したのは私なのに。


もうなんの関係もないはずなのに、大輔くんの隣に他の女の子が並ぶ姿が、私の心を容赦なく切り裂いた。
私よりはるかに彼に相応しい女の子が、彼の隣で笑っている、その姿がどうしようもなく、私を悲しい気持ちにさせる。

とにかく落ち着かなきゃと、ゆっくり深呼吸をする。
周りの人に不審がられないように、静かに息を吐いて、吸って、自分の呼吸に全ての神経を集中させる。余計なことはなにも考えないように、頭を空っぽにして。


やっと落ち着けたと思ったのに、隣の瑞香からかけられたのは、呆れた声だった。


「あんた、なんて顔してんのよ」


自分では平気な顔に戻ったつもりなのに、どうやらあんまり成功していないらしい。
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