年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「綺麗でもなんでもない、黒くて多くて重たいだけじゃない。

こんな髪、ずっと大事に伸ばしてたところで、どうせ今時のモテ髪の女には勝てないんだから……」


絵里ちゃんがすれ違う時に見せた、勝ち誇ったような小さな笑みを思い出す。

一度泣いて外れやすくなった箍がまた外れそうになって、慌てて唇を噛んだ。バカじゃないの、こんな初対面の年下の男の子の前で泣くなんて、みっともない!


彼はそんな私の表情の変化を見て、驚いたように髪に触れていた手を引っ込めた。どうしよう、と困っている空気がありありと感じ取れる。

ほら、困らせているじゃない、と自分を心の中で叱りつけながら顔を伏せると、彼がまた椅子を回した。

「あの、俺、カットは無理ですけど、シャンプーなら得意です! どうぞ、こちらへ!」


どうぞどうぞ、とシャンプー台へ私を導こうとするその言い方が妙に必死で、溢れかけた涙が引っ込んだ。
思わず小さく笑ってしまって、それを見た彼もほっとしたように笑う。
先に歩く彼のあとを追いながら、素直な子なんだなあ、と思った。
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