年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「いいの? 営業後に勝手にこんなことして」
「いいんです。シャンプーブローの練習です」

シャンプー台に私が座ると、座席がゆっくり倒れていった。顔に布がかけられて、温かいお湯が頭皮を這う。

彼の指がゆっくりと髪の間を通っていくと、なにか嫌な感情が、流れるお湯とともに体の中から出ていくような気がした。


――やばい、キモチいい……。


意識がぼんやりしていく。彼の指の感触が、固まった心の中までほぐしてくれるような気がする。

強がらなくてもいいですよ、と音を持たない言葉で語りかけられているようで、すうっと肩から力が抜けていった。


「椅子、起こしますね」

彼の声が耳元で聞こえて、椅子が起き上がっていく。起こされて髪を拭かれると、ぼんやりした心地よさが余韻として全身に広がった。

「気持ち良かった」
「ありがとうございます」

彼が笑いながら言うのを聞きながら、お礼を言うべきなのはこっちのほうなのに、となんだか申し訳なく思う。
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