年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「僕、嫌いなんです。あいつのこと」
「……はあ」
それはさっきの睨み合いでよくわかった。二人の仲が悪そうなのもわかったし、お兄さんのほうが感じが悪い人だっていうのも伝わった。
「だから、存在を抹消したいんです。少なくとも自分のテリトリーの中では、あいつの話をするのも嫌で」
それは究極の中の悪さだな、と思った。存在を抹消したい、なんて、他人に抱きうる一番の悪感情なんじゃないだろうか。
「意外です。辻井さんでも、そんなふうに人を嫌いになるんですね」
「表面を取り繕うのが得意なんです。心の中ではひどいことも平気で考えてますよ」
マティーニを流し込みながら、オリーブをかじる。慣れた仕草で種を紙ナプキンに吐き出した。
「クズですから、俺」
そう呟いて笑う姿は、いつもの穏やかさからまったくかけ離れている。……なんだか怖いな、と少しだけ、思った。