年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
ここまでずばっと言われるとは思わなかった。

しかも、こんな失礼な言い方で。


「悪いですか? 私だって人並みの幸せに憧れるんです。もう年も年だし、現実的な結婚相手を選ぶことが間違ってるとは思いません」

「それであなたが納得してるんなら間違ってないんでしょう。でも俺には納得しているように見えません」

「辻井さんに私の気持ちのなにがわかるんですかっ?」


ついカッとなって大きな声を出すと、カウンターの中からすっと小皿が差し出された。
私たちの間のぽっかり空いた空間に、こつん、と置かれたその皿には、生チョコが並べられている。

「頂き物なんですが、なかなかの味です。よければどうぞ」

「どうも……」

ヒートアップして、口論みたいなやり取りになってしまっていた。甘いものでも食べて落ち着けということか。

辻井さんも気まずげに顔を逸らして、グラスの中身を飲み干した。

「すみません。部外者がでしゃばりすぎました」

すでに短くなっていた煙草を灰皿に押し付けて、ギムレットを、と注文する。

「多分酔ってるんです。今日の俺の言うことは、全部忘れてください」

表面上はまったく変わらないように見えるけど、マティーニって確か、相当度数が強かったはず。そういえばいつの間にか一人称が僕から俺に変わっている。
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