年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
絶対断られるのは一瞬でわかったのに、なんとかその髪に触れたくてごちゃごちゃと言葉を並べる。

それでもその人は困ったように、でもはっきりと言った。


「私、髪を切る気も、染める気もないの。ごめんね」

「……やっぱり、こだわりがあるんですか?」

「うーん、私が、というよりは、彼がね。好きなんだって、長い髪」


それだけはっきり断られたらこれ以上どうしようもない。
やっぱりいるんだ、彼氏、と違うところでも意気消沈する。
その男、めちゃくちゃ羨ましいなあ、と思いながら、そうですよね、とすごすごと引き下がると、その人が小さくくすり、と笑った。

なぜ笑うのかと目を向けると、その人は笑ったまま言った。


「美容師さんだったんだね、きみ。いきなりキレーな髪、とか言うから、ひょっとして新手のナンパだったのかなってちょっとだけ疑っちゃったよ」

「すみません……」


身を縮ませて謝る俺を、その人はおかしそうに見ている。
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