年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
怖いか、とタケさんが笑ったままで言った。

「怖いか? あの店に立つのが」

「……怖いです」

今だっていつも怖い。

これでいいのか、満足してもらってるのか、この金額をもらえるだけのものを、俺は提供できているのか。
いつだって不安で、それでもタケさんがいて、いつも見ていてくれるから、なんとか踏みとどまっていられるのに。

一人になって、俺はちゃんと逃げないでやっていくことができるのか?

「怖いなら、大丈夫だよ」

タケさんが笑みを含んだまま、ひどく優しい声音で言った。

「自分に求められてるものをちゃんと理解できてるってことだ。怖いと思えるから努力できる。もっと上を目指せる。
……昔からお前はそうだよ。ちゃんとプロとして仕事をすることの意味をわかってる。だから怖れもするけど、ちゃんと逃げないで頑張れる強さも持ってる」

ちらり、と一瞬だけ、バックミラーに目をやって、俺の肩にもたれる沙羽さんを見た。

「片桐さんに教えてもらったんだろ?」

俺も同じように、沙羽さんの寝顔を見つめる。
沙羽さんがくれたものが、今までの美容師人生をずっと支えてくれた。
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